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糞神の子クソクレスが人の世に降り立った。栄光の神話を君に。

降臨


序章:糞と、人の標
第一章:クソクレスの旅立ち
第ニ章:金の糞と銀の糞(1)
第ニ章:金の糞と銀の糞(2)
第ニ章:金の糞と銀の糞(3)
第三章:北の厠(1)
第三章:北の厠(2)
第三章:北の厠(3)
第四章:聖馬アヌスミラブリス(1)
第四章:聖馬アヌスミラブリス(2)
第四章:聖馬アヌスミラブリス(3)
第四章:聖馬アヌスミラブリス(4)
第五章:ヘガデル村の少年(1)
第五章:ヘガデル村の少年(2)
第五章:ヘガデル村の少年(3)
第六章:糞と屁の攻防(1)
第六章:糞と屁の攻防(2)
第六章:糞と屁の攻防(3)
第六章:糞と屁の攻防(4)
第七章:伸びる糞(1)
第七章:伸びる糞(2)
第七章:伸びる糞(3)
第七章:伸びる糞(4)
第七章:伸びる糞(5)
第八章:糞の誓い(1)
第八章:糞の誓い(2)
第八章:糞の誓い(3)
第九章:糞を食らうもの(1)
第九章:糞を食らうもの(2)
第九章:糞を食らうもの(3)
第九章:糞を食らうもの(4)
第十章:アクソポリス(1)
第十章:アクソポリス(2)
第十章:アクソポリス(3)
第十一章:大の教えと小の教え(1)
第十一章:大の教えと小の教え(2)
第十一章:大の教えと小の教え(3)
第十一章:大の教えと小の教え(4)
第十一章:大の教えと小の教え(5)
第十二章:小便の大隊(1)
第十二章:小便の大隊(2)
第十二章:小便の大隊(3)
第十二章:小便の大隊(4)
第十三章:二つの奇跡(1)
第十三章:二つの奇跡(2)
第十三章:二つの奇跡(3)
第十三章:二つの奇跡(4)
第十三章:二つの奇跡(5)
第十三章:二つの奇跡(6)
第十四章:厠は二つ(1)
第十四章:厠は二つ(2)
第十四章:厠は二つ(3)
第十四章:厠は二つ(4)
第十四章:厠は二つ(5)
第十四章:厠は二つ(6)
第十四章:厠は二つ(7)
第十五章:炎の日(1)
第十五章:炎の日(2)
第十五章:炎の日(3)
第十五章:炎の日(4)
第十五章:炎の日(5)
第十六章:糞は舞い降りた(1)
第十六章:糞は舞い降りた(2)
第十六章:糞は舞い降りた(3)
第十六章:糞は舞い降りた(4)
第十六章:糞は舞い降りた(5)
第十六章:糞は舞い降りた(6)
第十六章:糞は舞い降りた(7)
第十七章:己が意志(1)
第十七章:己が意志(2)
第十七章:己が意志(3)
第十七章:己が意志(4)
第十七章:己が意志(5)
第十八章:邪(よこしま)なるもの(1)
第十八章:邪(よこしま)なるもの(2)
第十八章:邪(よこしま)なるもの(3)
第十八章:邪(よこしま)なるもの(4)
第十八章:邪(よこしま)なるもの(5)
第十九章:約束の地(1)
第十九章:約束の地(2)
第十九章:約束の地(3)
終章:糞は友達(1)
終章:糞は友達(2)
終章:糞は友達(3)
終章:糞は友達(4)

解説


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「私はシャワーズの半島に行く。案内はできるかな」
 そのクソクレスの問いに、看護室のベッドの上で、ベンジャーとシッコネンは顔を見合わせました。
「糞神と一緒に半島に戻ったとあれば、家族の身の安全は保障されぬ。俺は一人で戻る」
「私も、大隊長とともに」
 クソクレスは二人は多分そう言うであろうと予測していたので、用意しておいた別れの言葉を告げました。
「許しではない。贖罪の時が与えられただけである。
 汝、己が胸に問え。
 信仰とは何か、それに従い何を成さねばならぬのか。
 私がここを去った後、例え、汝らがアクソポリスの市民に命を奪われる事があれども、それは私の関知するところではない」
「ジャボールの所に行くのか」
「対峙せねばなるまい」
「……半島の街中に、ブランベンブルク門という大きな関所がある。そこのウンコー・ベン・リンベン通りには俺の妻と子が住んでいる」
「関所とは」
「昔、糞神に仕えていた住民や、今もその影響下にある人民が住まう居住区だ。俺の故郷でもある。命を救って貰ったとはいえ、そこの住人たちや、妻と子の身に災いがあれば、神の子といえども容赦はしない」
 その言葉を聞いたフンダが憤慨しました。
「不敬なり、クソクレス様に向かって何という口の聞き方だ」
「フンダと言ったな。とりあえず、お前の顔は覚えておいたよ」
「……」
 こんな屈強な軍人に命を狙われでもしたら、堪ったものではありません。フンダは口を噤みました。
「もう一度、最後に問う。汝、糞を捨てたのか」
「言うなっ」
 クソクレスは、黙って部屋を離れました。

-つづく-

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 アヌスミラブリスの嘶きが、天空に響き渡りました。
 ぶりぶりぶり、と、大きな脱糞の雄叫びも宙に舞っていきます。
「行くぞ」
 見送りの人々が、クソクレスの背中にいつまでも手を振り続けます。
「ご無事をお祈りしています」
 モレッタの声が聞こえたので、バビュウムが大きく手を振ると、フンダは、「こいつ、あの娘とできていたのかな」と思いました。 するとクソクレスもモレッタに手を振って返しているではありませんか。
「なんと、クソクレス様までもが」
「何だ、フンダよ」
「いやいや、大人の事情に首を突っ込むなどという、野暮な真似はいたしませぬ」
 大きな使命と小さな誤解を胸にして、クソクレスの一行は歩を進めました。
 高く聳えるク・ソードの残骸が、いつまでもクソクレスの一行を見守っていました。
 そして、前方には大きな海が広がり、海岸線の果てには小さな山並みが望めます。
 それこそがシャワーズの半島でした。
 そして、一昼夜も歩み続けると、その半島は大きくクソクレスたちの眼前にそそり立つほどまでになり、遂に一行は、半島に足を踏み入れたのです。

「止まれ、貴様たち」
 森林を切り開いた町へと続く大きな道中でクソクレスたちの前に立ちはだかるは、シャワーズ族の警備兵たちです。
「私はクソクレスである。人の子よ、道を空けよ」
 しかし、野蛮なシャワーズ族たちは、糞神の存在を知りません。
「クソクレスと言われても何か分からん。クソクレスとは何か?」
「神の子である」
「神とな!
 ならばあなた様は、小水王、降臨神ジャボールのご家族か」

-つづく-

 クソクレスの眉がぴくりと跳ね上がりました。そして、僅かな沈黙の後、続けました。
「……左様である。ジャボールに用件がある。道を通してはくれまいか」
「は、はい」
 簡単な嘘でしたが、知性の低いシャワーズ族には効果覿面だったようです。道は、すんなりと譲られました。そして一行は、半島の中にあるシャワーズ族の集落へ向け、その足を進めました。
「クソクレス様のお父上はブリューワ様であったはずだが、複雑な家庭の事情でもあるのだろうか」
 フンダは、よく分かっていない様子です。
 そして山一つを越えると、そこには、大きな町があったのです。

 クソクレスたちは、シャワーズ族の住まう街中に、足を踏み入れました。
 山の向こう側は、計画性のない、ごみごみとした家屋の連なりでした。
 しかしその先の高台の上には見るものを威圧する大きな宮殿があり、クソクレスはそこがジャボールの居場所だと直感しました。
 町の中心には大きな池があって、そこからは形容し難い異臭が匂って来ます。
 それは自然発生的な池ではなく、大きな便所でした。即ち池は小便の塊であると見てよいでしょう。
 池の角には厠があって、老若男女が順番待ちをしています。しかし行列の進行は速やかで、厠の行列に付き物の苦しそうに何分も厠の前で待ち悶える表情をした人の姿は見られません。これは妙な話です。
「クソクレス様、私も便意をもよおして参りました。並んで来ます」
 今回、フンダはアクソポリスを出発する際にたくさんの供え物を頂いていて、食べ過ぎによる便意が数刻ごとに起こるのです。
「集落の入口でしたばかりだというのに、またであるか。しかし脱糞は生きとし生ける者全てに通ずる善行である。心行くまでひり出すが良い」
「はい」
 フンダは長い行列の先に並びました。
 その行列の流れはやはり速やかで、フンダの姿はあっという間に共同厠の中に吸い込まれていきました。
 すると、どうした事でしょう。ものの十数秒後に、フンダの姿が出口にあるではありませんか。
 クソクレスは、強い感銘を受けました。
「なんと言う素早い脱糞。正しく快便であったのであろうか」
 糞神の子たるクソクレスとて、そんな早業は不可能です。
 しかし、厠から出てきたフンダは涙目で、何故か頭にたんこぶを作りながら、もじもじとクソクレスに訴えかけます。
「クソクレス様、脱糞ができません。ここには小用便器しかないのです」
「何!」
「女子用も覗いて来ましたが同様です。このたんこぶがその証明です。背の高いゴリラの様な女にやられました。それはともかく男性用は小用便器のみ。女子用は屈んでも糞ができぬよう、便器が小さく小さくつくられているのです」
 クソクレスの脳天に、かつて経験した事もないような衝撃が走りました。

-つづく-

 小用便器の存在はともかく、大が禁止、小しか認めていない厠など、その本来の意義からして数十分の一ほどの役割しか果たしていないと断言せざるを得ません。糞のできぬ厠など認めるならば厠など柱一本で事足りるではありませんか。しかしフンダの入っていった厠が小用しか認めてないとすれば、その行列の進み具合の早さも説明できようというものです。
「そう言えば……」
 バビュウムは鼻を鳴らしました。この池からは糞特有の麗しい香りがなく、鼻の奥を刺激するアンモニア臭の漂いしか感じられません。厠が糞を拒絶し小水のみが池に垂れ流されているとするならばそれも辻褄が合おうと言うものです。
「く、糞が、糞がしたい」
 フンダの体が小刻みにぶるぶると震えます。
「民人よ、ここでは大いなる便、即ち大便は、何処で行えば良いのだ」
 クソクレスは、道を歩く一人の中年に尋ねました。
「大便?公道で汚らしい言葉を吐くな」
 なんと言う狼藉でしょう。
「しかし、見たところ貴様ら旅人だな。まあ、知らぬも仕方なかろう。大はブランベンブルク門ですれば良い。あっちだ」
 中年の指差した先には、薄ら汚れた一本の細道がありました。

「なんと言う汚さだ」
 細道の汚さに、クソクレスは絶句しました。
 幅、人一人か二人分のその通りは、恐らく数十年は清掃をした跡もないと見受けられます。
しかしどうも、この半島には大便を許される場所がこの奥にしかないのでしょうか、人通りだけはかなりのものです。通りを行く人々は皆苦しそうな表情で、その先へと駆け去ります。
「まあ、奥様。お久しぶりで」
「十日ぶりですから。こんな浅ましい所にはなるべく来たくないので一週間以上は溜めてから来る事にしているのです」
「素晴らしいですわ。私などまだ修行が足りぬのか、三日に一度は来てしまいます」
「仕方ありませんわ。おほほほほ」
 会話から推測するに、シャワーズ族は糞を不浄なるものとして扱っているのでしょう。
 クソクレスは自分の心の中に、黒いとぐろのような感情が芽生えてくるのが分かりました。
「シャワーズ族は、抹殺せねばならぬ存在である」
 しかし、クソクレス自身も何だか糞がしたくなってきたので、怒りは取り敢えずこの場で収めその足を速めました。何はともあれ、この先には脱糞ができる厠があるはずです。

-つづく-

「これが、ブランベンブルク門か」
 クソクレスは驚きました。半島の中には大きな壁がそそり立ち、街を東と西に、真っ二つに分断しているではありませんか。そしてその中心には、大きな関所が見えました。
 その刹那、クソクレスは壁の向こうから芳しい糞の香りが漂ってくる事に気付きました。それで、クソクレスは少しだけ心を落ち着かせる事ができました。
「止まれ、女ども」
 先に門に辿り着いた先の二人の夫人が、警備の男に呼び止められています。
「用件は。ウンコー・ベン・リンベンの民のものか」
 その言葉を聞いて、一人の夫人が形相を変えて反論しました。
「な、何を失礼な。こんな汚らわしい所の住民であるものですか。私たちはただ大きな方の用件で来ただけです」
「そうか、失礼したな。ではこちらへ入れ」
 見るとそこには、大きく"大"と書かれた厠がありました。
「貴様は」
「旅人のフンダと申す。脱糞を所望する」
「なっ、脱糞などと、汚い言葉を口にするな。大と言え、大と……まあいい、入れ」
 クソクレスも、その男に呼び止められました。
 クソクレスは怒りからか、大きな威圧感を漂わせています。
「貴様、用件は」
「……脱糞を所望する」
 クソクレスは、敢えて脱糞と言う言葉を使いました。その表情は、一見穏やかで、しかし、その眼の奥には深い炎が燃え広がっていて、眼光鋭く警備の男を突き刺しました。神の子の威圧感の前には人の子など立ち向かう術もありません。
 男は、何も言えません。
「くっ、分かった……入るが良い」
 その時です。厠の中から、フンダの大きな排便の音が響き渡りました。

-つづく-

 ぶりりりり、ぶりぶりぶりぶり。
 フンダの快便は、今日も絶好調です。
 しかし警備の男は顔を真っ赤に紅潮させ、強い口調でそれを咎めました。
「貴様、汚らしい大きな音を立てるな!むっ、それに、その音から察するに貴様、大のみならず同時に聖なる小便も混ぜておるな!」
 男は、フンダの入っている個室を蹴破りました。あまりにも無礼な行為です。
 しかしフンダは快便を済ませた直後で気分が良かったので、下半身を丸出しにしながらも平然としています。
「排便の際小便が混じるのは当然だろう。それともここは、文字通り大便しか許されぬ場所なのかね」
「当たり前だ」
 当たり前とはまた随分な話です。しかし男は構わず言葉を続けます。
「生理的な現象であるからしてお心の広いジャボール様は民衆に大をお認めになっているだけの事だ。この不浄なる場所で、聖なる小用を行うなどと、天が許しても俺が許さ……グワーッ」
 クソクレスの右手の糞棒が、背後から男の脳天を砕きました。クソクレスの我慢は、ここが限界だった様子です。
「…………」
 脳漿を飛び散らせ、果てた男の脇で無言のまま排便を済ますと、クソクレスはフンダとバビュウムを呼び寄せました。
「…………ウンコー・ベン・リンベンに入るぞ」
 鬼気迫るクソクレスの表情に、二人はただ頷くしかありませんでした。
 門の奥、ウンコー・ベン・リンベンは、懐かしい趣の通りでした。
 ここからは芳しい糞の香りが仄かに漂い、糞造りのブロックで作られた家屋がずっと並んでいて、しかしその街並みには全く活気がなく、街を行く人々の目も、どこか虚ろに感じられます。奥にはうらびれた廃墟があり、よく見ると足元には、何十年も前に捨てられたと思われる糞模様のクロスが落ちていました。
 クソクレスがそっと拾い上げると、クロスは手の中でぼろぼろと姿を崩して行きました。
「ここは、聖糞堂の跡地なんだね」
 バビュウムの言葉が廃墟に響きます。
「その通りです、旅人方。いえ、その後光、その佇まい、その若さ。あなた様は、神の中の神、糞神ブリューワ様の一人息子、クソクレス様ですな」
 クソクレスたちが後ろを振り向くと、一人の老人が立っていました。
「このようなお恥ずかしい廃墟の姿を見られてしまい、申し訳ない思いで一杯です」
 老人は、情けなさそうに肩を落とし、続けました。
「我々、糞に仕える人々の力が弱すぎたのです。
 ……町は小便を至高のものとするジャボールの手によって二つに分けられ、我々糞の教えの下にあった人々は、こうしてブランベンブルク門の奥の、狭い土地のみを与えられ、最下層の民として隔離されているのです」
「汝の名は」
「糞教徒ウンコロスの四男、ボットンジャーと申します」
 ボットンジャーは、先の戦いで死んだ司祭長ゲイリーの、たった一人の生き残りの兄弟でした。

-つづく-

 ボットンジャーは彼の狭い家にクソクレスたちを案内すると、取り敢えず古くから伝わる歓迎の脱糞で一行を迎えました。
「ここでは脱糞は自由なのか」
 クソクレスの問いに、ボットンジャーは当然ですと答えました。
「人々から糞を奪い、糞を隔離して、何が降臨神ですか。そしてそれを受け入れる我々シャワーズ族も、気が触れていると言われても仕方ありますまい」
「そうだな。シャワーズ族は、馬鹿しかいないのかな。人類の最下層に位置する蛮族とも見受けられる」
 フンダが即答しますが、いくら本人が貶していると言っても、ボットンジャーもまた、当のシャワーズ族の一員ですから失礼な物言いです。従ってボットンジャーは、フンダの返答は無視しました。軽く機嫌を損ねたのでしょう。
「どうしてこんな事になったんだい?」
 そう尋ねるバビュウムの問いには、ボットンジャーは答えます。
「ジャボールの教えとは、小便を至高なるものとし、その他の存在を一切認めぬと言う恐ろしい教えでした。しかしまだ当時、大半のシャワーズ族は糞の教えに従っていましたから、ジャボールはその勢力を拡大しつつも我々の存在を認めていました。完全に消し去る事は不可能だと判断していたのでしょう。しかしある日、突然、街の中に壁ができたのです」
「壁とは、あの」
「左様、ブランベンブルク門の左右に広がるあの壁です。そしてその中に我々は押し込まれ、合法的に外界と交流する術(すべ)はほぼ閉ざされました。我々がここから足を踏み出すには、小乗便教への改宗をして、時間を掛けてその事をジャボールに認めさせるしかないのです」
 クソクレスは、これが以前に聞いた迫害だと理解しました。
「何故、闘わなかったのか」
 クソクレスの問いに、ボットンジャーの両の手がぶるぶると震えました。
「糞を祭る聖職者たる兄ゲイリーはアクソポリスをはじめとする近隣諸国から銃器を買うために我々から寄付を集めました。ところがその金は、ゲイリーとその側近ブリウスの豪遊費に当てられていたのです」

「なんだか、やはり話が違ったみたいですね」
 沈黙を破ったのは、フンダの言葉です。

-つづく-

 ボットンジャーが、重い口を開きました。
「ゲイリーは、まずブランベンブルク門の警備兵に賄賂を渡して自分たちだけの外出許可権を得ました。そしてそのまま街へ繰り出し、女を買い、酒を食らい、博打にはまり、それだけでは飽き足らず、あろう事か愛人を囲ったのです。
 その愛人は、小柄で、大きな胸を持った美しい女性でした。シャワーズ族の女はその大半が男に負けず体がごつく、類人猿のような体躯のものが多いのですが、一体何処で見つけてきたのやら、それはそれは可愛らしく大人しい娘でした。しかもその年齢を聞いて驚きなさい。十五、十五ですよあんた。我々が必死で集めた金を遣って、そんな羨ましい行為を働いていたのですよ。こう言ってはなんですが私の妻は身長は私より高く肩の筋肉は盛り上がり、あまつさえ薄っすらと髭が生えており、しかも乱雑で、家事など一切しないという悪魔のような嫁でした。私が病に倒れた際も世話一つせずして昼まで寝転がっておりました。あんな奴の顔は思い出したくもありません。手形を支払えず生業を畳んだ日の夜も化粧道具を大量に買い込み、それを咎めたところ逆に殴り返され前歯を二本失いました。妻は、五年前に流行り病にかかって死んだのですが、あの時の嬉しさは今でも忘れられません。毎年妻が死んだ日が来るとこうやって酒で祝うのですよ、わっはっは」
 ボットンジャーは傍らにある酒樽に手をかけ、それを一気に飲み干しました。
「ううむ美味い。客人もどうかね」
「では遠慮なく頂こう」
 フンダは先ほどから気に掛けていた、台所の棚にある、麦酒の瓶に手を掛けました。
 やがて酒盛りが始まり、日も暮れる頃には、フンダとボットンジャーはすやすやと寝込んでしまいました。

-つづく-

 バビュウムはまだ子供です。フンダとボットンジャーに強制されて口に含んだ一口で、顔を真っ赤に赤らめうんうんと唸り続けていました。
「クソクレス様、俺、ちょっと外に出て来ます」
 バビュウムが外に出て行くと、仕方がないのでクソクレスはだらしなく寝込んでいるフンダとボットンジャーの体に毛布を被せ、肴の散らばった地面の清掃に取り掛かりました。まるで二人の召使になった気分です。
 その時です。
「ぶるるるる、ぶりぶりぶり」
 いつもは冷静沈着なる名馬アヌスミラブリスの、興奮した嘶きが塀の向こうから聞こえてきます。そしてすぐさまバビュウムが、慌てた表情で家の中へ駆け込んで来ました。
「火だ、ウンコー・ベン・リンベンが燃えてる。大火事だ!」
 その言葉に真っ先に反応したのは、寝込んでいたはずのフンダでした。自分の身に危険が迫ると圧倒的に対応が早くなるのがフンダの特徴です。フンダは布団の中からすぐさま跳ね起きて、家の外に飛び出ました。クソクレスもそれに続きます。
「おお」
 クソクレスは、街中に燃え広がる炎に驚きの声を上げました。
「皆のもの、水を……むっ?」
 その時です。ブランベンブルク門の石扉が左右にぐわっと開き、たくさんの馬群が現れました。
 それがアクソポリスに現れたシャワーズ族の兵士たちと同じ格好の集団である事に、クソクレスは気付きました。
「不浄なる糞の民どもよ、退けい。消火活動隊のお出ましである」
 数百を越える騎兵が、燃え盛る家屋を囲みます。
 すると騎兵たちは馬から降り、袴を脱ぎ捨て小便の構えを見せたではありませんか。
「何を始める気だ」
 クソクレスの額に、汗が灯りました。

-つづく-

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